噓とエッセイ#6『爆弾』

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 さらに、問題はある。気が早いかもしれないが、爆発したときのことだ。果たしてその規模はいかほどか。  私が見た映画では、たしかざっとTNT二〇トン分くらいの威力はあった気がする。私の爆弾も同程度の威力だとすると、街中で爆発したら、人を巻き込むこと間違いなしだ。  もちろん死ねばそれで終わりだし、責任を被せられることがないので、渋谷のスクランブル交差点にでも行くことも、選択肢としてはあるかもしれない。  だけれど、多くの日本人はそうだろうが、私も例に漏れず、人に迷惑をかけるなと教え込まれている。  だから、私が爆発する場所は、だれもいない小高い丘の上か、海に浮かぶちっぽけな船ということになるだろう。  しかし、そこで暮らす動植物はどうしても傷ついてしまう。今は持続可能なSDGsの時代だ。環境に負荷をかけるような真似はご法度だろう。  とはいえ、ここでひとつ懸念がある。それは私が誰も見ていないところで、爆発するということだ。  もちろん、死ぬときは一人だし、孤独死は現在、山手線の本数に匹敵するほどに起きている。私も孤独死まっしぐらだ。  だけれど、今流行りの漫画の主人公ではないが、私だって大勢に看取られて死にたい気持ちは持っている。  じゃあ、どうするか。爆発する瞬間をドローンで撮影して生配信でもするか。  しかし、私が生配信をしたところで、立ち上げたばかりのアカウントを見てくれる人の数なんて、たかが知れている。現実では、そう簡単にバズは起こらないのだ。
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