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「ちょっとすみません!」
カール様の腕を振り払い急いで馬から飛び降りるとシュプリンガーを抜いた。
「ハル!?」
風の威力を剣でいなしながら草原を走る。風の集中点を見つけて一気に斬りつけた。
「危ないではないか!」
ジオン様が驚いた顔をして風の亀裂から転移魔法を使って登場した。
「危ないのはジオン様でしょ!? なんで風魔法を一緒に使うんですか!?」
「あんな男にくっつくな!」
「くっついてません! 変な事言わないで下さい」
ジオン様こそが屈み込んできて、不満そうな顔をわたしにくっつけてくる。
「それよりもちゃんとお仕事してきたんですか? またアルベルトさんに怒られても知りませんからね?」
「無論だ」
別れた時には泥だらけのヨレヨレだったのに、服装はまたパリッと清潔に整えられていて、ちゃんと王様の仕事をしてきたらしい。
「魔王……?」
振り返るとカール様の顔面は蒼白だった。
風魔法を使った魔王に、勇者のわたしが斬りこんでいき、おまけに言い争いをしているように見える。
「あのカール様!? この人魔王ですけど、ほら大丈夫なんで。この前説明しましたよね??」
わたしの話が聞こえないのか、カールさまが剣を抜いて馬を走らせた。ジオン様に向かって突き進んでくる。
不敵な笑みを浮かべていたのはジオン様だ。落ち着いた深紅の瞳が燃えるような緋色に変わる。剣を向けてきた男には、容赦する気は無いようだ。
わたしはジオン様の前に飛び出すとシュプリンガーを振りかざして、カール様の重く鋭い剣をなんとか受け止めた。
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