最後の戦い

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「今回は結構早かったですねえ。レイヴン王国の首都を出てから3ヶ月ほどですか? って……最速記録じゃないかなぁ?」    男はわたしたちが旅立った期間を正確に言い当てた。その事実がどういう意味かと考えると背筋が寒くなる。  ずっと見張られていた?  話ながら近寄ってくる男に「止まれ!」とカール様が威圧する。 「お前が魔王か!?」  覇気のある彼の声が広間に響き渡ると、男はふっと息を吐き、不敵な笑みを浮かべた。 「そもそも魔王様が、こんなにわかりやすい場所にいらっしゃるとお思いですか?」  罠────!?  男の言葉に仲間達から、最大限の警戒心が吹き出す。   「魔王はどこ?」  声が震えてしまわないように、お腹に力を入れて尋ねた。  男は、おや? と言わんばかりにおおげさに体を横にずらし、カール様の影に重なるようになっていたわたしをのぞき見た。 「そこの若者が勇者かと思ってましたけど、これはビックリ。お嬢さんが勇者ですね?」 「そうよ。わたしが勇者、ハル・ヒオカよ。魔王はどこ!?」 「おー」  男は感嘆したようにパチパチパと拍手する。 「ふざけるな!!」    カール様が珍しく声を荒らげた。 「決してふざけたつもりは無かったのですよ? 若い女の子が勇者のパーティーにいる事自体、珍しい事では無いんですけどねぇ。まさか勇者自身がこんなにかわいらしいお嬢さんだとは」  何の警戒心も無く大股で近づいてくる男が、これ以上距離をつめて来ないように、わたしは切っ先を向け狙いを定める。  さすがに困惑したようで足を止めた。 「これは失礼。自己紹介がまだでしたね。私は魔王ジオン・クロード様の従者でアルベルトと申します。どうぞお見知りおきを」  魔王の従者は朗らかに、且つ爽やかに微笑んで話を続ける。   「いやあ、こちらの男前の若者が勇者だなんて、まるで古くさい王道の物語みたいで面白く無いなあと思ってたんですよ。  まあ……だからと言って、この前の勇者は脂の乗りきったおじさんだったから、ジオン様も居室から一歩たりとも出て来やしないし。こんなお嬢さんなら部屋から出てくるかも知れませんね」
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