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突然青白く光る魔方陣がわたし達の目の前に現れた。
その中央から吹き出す白い煙が辺りを包み込んだ。
敵の攻撃では無い。
まず動いたのはエルザさんだ。魔方陣を展開させて、防御と魔法防壁の呪文をわたし達にかけた。
「あなたが魔王ね。覚悟してもらうわ」
大広間にわたしの声が響く。
やるべき事はただ一つ。
魔王を倒せば平和が訪れるんだ。
「覚悟? 何の覚悟だ? だいたいお前達は──」
カール様よりも速く、わたしは走り抜ける。
心は想像していたよりも静かで、これまでの戦いの中でも一番と言えるくらいに頭は冴えわたり体は軽い。
空中へと飛び上がり、聖剣に導かれるままに魔王へと振り下ろした。
瞬きをした彼の瞳は間近で見ると、宝石みたいに美しい。
紅の瞳は中心にいくほど濃く黒く、まるで暗い夜空をかき消す夜明けの赤────次の瞬間には不快そうに眉をひそめた。
「娘。人がまだ話しているのに礼儀を知らんのか?」
魔王はいとも簡単に聖剣の刃を左手で受け止めた。
「なっ!?」
これ以上振り下ろせない。でも引き抜くこともできない。
魔王は刃を掴んだまま、上方へ剣ごとわたしを引っぱりあげる。軽々と体が浮き上がり、そのまま右腕で体をがっちりとホールドされた。
「ハル!!」
血相を変えたカール様が魔王へと剣を振り抜き、援護するようにエルザさんが魔方陣から氷の刃を放つ。
「うちの主の邪魔をしないでくださいね~」
にこやかに直立していた従者が、短剣でカール様の長剣を受け止めた。もう片方の手でエルザさんの氷の刃に触れると、かき氷みたいに削られ、ふわりと床に落ち消えていく。
最強の剣士と大魔導師だ。なのに魔王の従者1人を相手にまるで歯が立たない。
こんなに力の差があるなんて……!
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