独身主義女の恋と結婚

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「セフレでいい」 ことを終えた橘が呟いた。 セフレ……でいい!? 「どういう意味?」 付き合う気はないってこと? 「都築(つづき)は男より仕事だろ? だから、面倒なことは要求しない。ここでこうやって触れ合ってお互いの心の隙間を埋められればいいだろ?」 そう言いながら、私の頬に触れる橘の手は、思っていた以上に大きくて、あたたかくて、そしてどこか優しくて…… でも、天邪鬼な私は、そんなこと口が裂けても言えなくて、代わりに口から出たのは、こんな言葉だった。 「私には心の隙間なんてないけど」 嘘じゃない。 28歳で元カレと別れて以来、心に隙間が出来る余裕がないほど仕事を頑張ってきた。 たかが係長だけど、それでも仕事ぶりを認められてると思えることは、十分に私の承認欲求を満たしてくれている。 すると、橘は撫でていた私の頬をブニッとつまんだ。 「ほんっとに可愛げのない女だな」 「いたっ! ちょっ、何するのよ! 離してよ」 私はそう言ったつもりだけど、実際には頬をつままれてて、うまく言えてない。 「くくくっ、おもしれぇ。ま、嫌って言うなら、今日のこと、バラすけどな」 はぁ!? あり得ない!! 「バカじゃないの? そんなことしたら、橘の立場だって悪くなるのよ!?」 憤慨する私をよそに、橘は涼しい顔で頬を摘んでいた右手を布団の中に潜り込ませた。 「別に言いふらしたりはしないさ。ただ、きっと昨日ここにいた連中からは、お前がちゃんと帰れたか聞かれるだろうから、ありのままに答えるだけで」 そう言った彼は、ニッと口角を上げて笑う。 なっ!? 言葉を失った私の柔らかな膨らみを彼の大きな手が包み込む。 「頑張って積み上げた実績を、体を使って得ていたと思われるのは心外だろ? 素直にうんって言った方がいいんじゃないか?」 耳元で囁く彼は、そのまま私の耳たぶを食んだ。 「っン!」 声にならない声を漏らした私は、再び体の芯に熱が灯り始める。 私に触れる彼の手は、なぜかとても優しくて、意図しないままに体の奥の熱だけが上がっていく。 「来週も来るだろ?」 熱が上がりきる直前にそう問われて、私は思わず頷いていた。 「いい子だ」 こうして、私たちの関係は始まった。 仕事の合間を縫って、触れ合い、一つの時間を共有する。 けれど……
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