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慌てて駆け寄ろうとして、
すぐに思い直して立ち止まる。
人気のない場所で、
女の子や子供が倒れているところを駆けよって、
物陰に隠れていた別の奴が襲い掛かって
身包みを剝がされる事件があるって聞いたことを思い出したからだ。
ポケットからカナリアラムの丸薬を出して一粒を
柱の中に放り投げる。反応はなし。
中には生き物はいないし、ガスや魔法もないってことだ。
大丈夫なはずだけど、念のため勢いよく中に入り、
すぐに振り向き物陰に誰もいないことを確認する。
それからムシシラ石を置いて、誰かが来てもわかるようにしてから
倒れている女の子の傍にしゃがみこんだ。
「すいません、大丈夫ですか?」
声をかけても反応はない。
呼びかけながら肩を揺らす。
暖かいので命の危険があるような状態ではなさそうだ。
そうして二三回揺すると、女の子がゆっくり目を開けた。
「すいません。大丈夫ですか。」
「あ、はい。すいません。」
彼女は目をこすって立ち上がった。
寝てただけ?いやこんなところで寝てるか?
「大丈夫ですか?どこか具合が悪いなら村のガードさんか誰か呼びますが。」
「いえ、大丈夫です。すいません、ご親切に。」
倒れていた子が無事のようで、とりあえずは一安心した。
置いておいたムシシラ石を回収して、
失礼だとは思ったけど、女の子を観察してしまった。
都の遊園地のキカイ屋敷のジョシコーセーロボみたいな
奇妙な格好の子だ。
こんな遺跡で一人で?ちょっと普通じゃない?
何かの事件なのかなんなんだろうかと考えていたら、
聞き慣れない音が響いた。女の子の方からだ。
女の子がすいませんと小さな声で言うと、
ポケットから銀色の板を取り出した。
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