家主

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家主

二人でせっかく綺麗にした部屋を粉まみれにしてしまったので、もう一度軽く床を拭く。 そしてサッと小麦粉を足して混ぜておいた。 「アリスちゃん、今度はフライパンで焼くよ~!これは危ないから見ててね」 アリスちゃんは残念そうな顔をしながらも頷くと椅子を横に持ってきた。 そしてそこに登るとじっと焼き加減を見ている。 「よく見ててね!アリスちゃんがもう少し大きくなったらまた教えてあげるけど」 アリスちゃんは顔をあげると小指を出した。 「ん?ああ!約束ね!」 私はアリスちゃんの小指に自分の指を絡ませる。 小さな小指が可愛らしい。 私は手早くパンケーキをひっくり返して両面焼くと綺麗なお皿に並べた。 アリスちゃんの分と自分の分、そして多分この家の家主のあと一人の分の三枚焼いておく。 「上から残りのはちみつをたらしまーす」 キラキラに光るはちみつを見てアリスちゃんのお腹がまた鳴り出した。 「はい、お待たせ!じゃあ食べちゃおっか?」 アリスちゃんをテーブルに座らせるとナイフとフォークを用意する。 私も反対側に座ると… 「では、いただきます!」 手を合わせて挨拶をした。 アリスちゃんも同じ様に手を合わせると口を『いただきます』と動かす。 パンケーキを食べやすい大きさに切ってはちみつがたっぷりとかかったところを口に入れた。 「んー!掃除のあとの甘い物は格別だね!アリスちゃんどう?」 私はアリスちゃんを見ると… パクッパクッ! アリスちゃんは余程美味しかったのか夢中でパンケーキを頬張っていた。 「むっ!」 すると途中で喉に詰まったのかどんどんと胸をたたく。 「大変!牛乳飲んで!」 料理に使って余った牛乳を急いで持ってくるとアリスちゃんがすごい勢いで牛乳を飲んだ! ふー ホッとしたように息を吐くと 「もう!落ち着いて食べないからだよ!」 アリスちゃんを注意する。 シュンと反省する様子のアリスちゃんに私は自分のパンケーキを半分見せると… 「わかったのならよろしい!そんなに美味しいなら私のもあげるよ」 ニコッと笑うと目を輝かせた。 アリスちゃんのお皿にパンケーキを半分乗せてあげると今度はゆっくりと味わう様に食べてくれている。 私はその様子をポカポカする気持ちで眺めていた。 アリスちゃんがしっかりと一枚半のパンケーキを食べ終わると… ドタドタッ! 外からけたたましい足音が近づいてきた。 そして家の前で止まると扉が壊れそうな勢いで開いた。 「アリス!!」 大柄な男の人が険しい顔をしながら駆け込んできた! アリスちゃんは名前を呼ばれてビクッ!と肩を揺らすと… 「何処に行ってたんだ…」 ボソッと呟く。 へ?なんて? 体の割に声が小さくて聞こえない。 私はポカーンと男の人を見ていると…アリスちゃんはサッと椅子から降りて私の後ろに身を隠した。 するとそこではじめて男の人は私の存在に気がついたようだ。 「誰だ…」 警戒するようにギロッと睨まれる。 私は椅子から立ち上がると… 「留守中に勝手に上がり込んですみません。私、マリサ修道院のリナと申します。アリスちゃんと道でぶつかり怪我をさせてしまったのでお家の方に一言謝ろうと…」 私が頭を下げようとすると… 「わかった、もういい。帰ってくれ」 腕を掴まれて家からポイッと放り出された。 へ? 私は男の態度にしばらく家の前でボーゼンと立ち尽くした。
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