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実験は成功したはずだ。
低かった視界が高くなっている。背が伸びているのは確実だ、間違いない。
だが何故だろう、さっきからうまく喋ることができないのだ。加えて。
「な、な、な」
自宅に帰ってきた妻は、何で真っ青な顔で自分を見ているのか。
――突然イケメンが現れて驚いたのか?それにしては、ちょっと反応がおかしいような。
やがて、彼女は悲鳴を上げながらキッチンに飛び込み、何かを取り出して身構えた。そして。
「し、死ねー!この巨大ゴキブリ!!」
ぶしゅうううう!と凄まじい勢いで噴きかけられる殺虫剤。激痛と共に意識が遠ざかるのを感じながら、俺は思ったのだった。
――あ。人間のイケメンにしてくれって言うの、忘れてた……。
だからって、でっかいゴキブリのイケメンにしてくれなくなっていいではないか。
超天才なはずの科学者は、泡を吹いて悶絶しながらそうツッコんだのだった。
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