六十

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六十

 陛下と王子の特殊能力避ける為、魔法で作られた檻の様な荷馬車に乗せられた。この馬車の中にいれば陛下と王子は追跡できないらしい。  一人だと思っていたに馬車の中には、私と同じ――獣化した子供たちが数人乗っていた。 「この子達はどうしたのですか?」 「ああ、この子達はこの国ではない他の国から仕入れたのです。その国はローランド国とは違い貧困の差が激しく、口減ら、要らない子なので私の実験に使用します」  仕入れとか、実験とか、デンスは残酷なことを淡々と話す。 「あなたは……この子達を実験に使うと言うのですか?」 「ええ、実験には不可欠な素材です」  素材? 子供達をそんなふうに言える――なんて怖い人なんだ。子供達はデンスを見て"ピャー、ひゃー"と小さな悲鳴を上げて泣きだした……なかには殴られたアト、手足に怪我をしている子もいる。 「さて、話はここまでにして出発しましょうか。おい荷馬車を出せ!」 「かしこまりました」  声をかけるとデンス所長は前の従者席に移動していった。ランタンの灯りが灯る、檻のような荷馬車の中で体を丸め恐怖に泣いている子供達。  そうだ"オフトゥン召喚"でこの子達を癒してあげよう。 「【ふわふわオフトゥン召喚!】」  荷馬車の中、いっぱいにふかふかなオフトゥンを召喚した。子供達はいきなり現れたオフトゥンに興味を示した。初めは恐々触っていた子供達だけど。 「フカフカ、お布団だ」 「布団、気持ちいい」 「あったかいね」  みんなは涙を拭いて、喜んで、オフトゥンに乗ってくれた。その中、隅っこでコチラに背を向けて座る子を見つけ、その子に話しかけた。 「あなたもみんなと一緒にオフトゥンに乗らない? 楽しいよ?」 「我はいい、獣人などの施しなど受けぬ」  獣人って……。でも、よくこの子を見れば背中に羽を生やして、お尻に鱗状の長い尻尾が見えた。 (この子は竜人だ……) 「おいでよ、みんなで遊ぼう?」 「うるさい。我は子供ではない、子供扱いするな!」  私は執拗に話しかけた。  だって、このドラゴンは羽、手足に怪我をしていたから。 「あなたの怪我を治したい、オフトゥンの上に乗ってくれない?」 「はぁ? 布団の上? お前は我の怪我を治せるのか?」  コクンと頷いて、特殊能力て治せると説明した。 「まだ特殊能力が芽生えたばかりで、どれくらい治せるのか分からないけど……あなたがオフトゥンに乗ってくれるのなら頑張る」  ……わかった、変なことはするなと。  渋々、ドラゴンもオフトゥンに乗ってくれた。
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