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六十二
「……!」
リチャード様の声が聞こえた様な気がした。
助けに来てくれるのを持っているよ。
私は癒しの力を使いオフトゥンの上でみんなを癒していた。癒しが効いとのかドラゴン君の傷もよくなったみたい。
「君の特殊能力は変わっているな」
「ドラゴン君もそう思う? でも、私にぴったりな能力だと思ってる……ドラゴン君の傷もよくなったでしょう?」
「まだ完全とはいかないが、傷が塞がったありがとう……黒猫」
ドラゴン君がどうして捕まったのか話しを聞いた。ドラゴン君は自国で多発する竜化ドラゴン誘拐の情報が欲しかった。他の国も調べたが情報がなく困っていた。
ちょうどローランド国で王女誕生の祝いの舞踏会が開催されると聞きやって来たところ。偶然に獣化する子供か荷馬車に乗せられる現場を目撃。
犯人が離れた隙に荷馬車に近付くと、その馬車の中に竜化ドラゴンを見つけ逃している所に犯人が戻り、ドラゴンを庇い羽を怪我をしたと言った。
「ドラゴン君が竜化していると言うことは、抑制魔石が取れちゃったの?」
「そうだ。犯人と揉み合っているうちにピアスが外れちまった」
と耳を見せた。子供なのにドラゴン君は仲間を助けたんだ。凄いな、ここは一番年上の私が頑張らないと。
「そっか……ドラゴン君の怪我が治ってよかった。よし、いまからお姉ちゃんが頑張るから安心してね」
「おい、お姉ちゃん? ちょっと待て……黒猫、お前、ワレを何歳だと思った?」
「えっと、私よりも年下の12歳くらい?」
「あー! ドラゴンは二十歳を過ぎるまで竜化の姿が幼体なんだよ、ワレは17歳だ!」
色々ありすぎて忘れていた……そうだ、ゲームでもそんな設定だったけど。
「ドラゴン君、私よりも一個上!」
「黒猫! 竜人を見た目で判断するな!」
ドラゴン君は怒りに羽をバタつかせた。
「ご、ごめんなさい……」
「フン、まあいい……俺の特殊能力は爪で攻撃する「ドラゴンクロー」だ。一つ黒猫に提案がある。ワレがあの出入り口の鍵を爪で攻撃する……が、一度やって爪を割ったが、黒猫のおかげで治った」
「もしかして、まだ鍵に攻撃するの? 治ったのに爪が割れてしまうわ」
「ああ、確実に割れるだろう。だけど、こんな場所から逃げたいだろう?」
「逃げたけど、あなたが一番痛い思いするじゃない」
「ワレはいい。爪が割れたら黒猫が治せ! みんなでこんな場所から逃げるぞ!」
+
ガギッ、ガギッとドラゴン君はドラゴンクローで壁を施錠された鍵を攻撃したが、何かの魔法で鍵は頑丈になっていた。それならと横の壁を切りつけた。
ガギン、ガギンと爪が鉄を抉る。
「ぐっ!」
「……い、癒し!」
「泣くな、黒猫!」
「だって、ドラゴン君……」
爪が割れたら、泣きながら私が爪を直だけど治してドラゴン君がまた壁に攻撃する。それを何度か繰り返しているうちに――鉄に僅かだが穴が空いた。
「穴が空いた、ドラゴン君……凄い」
「まだ、小さい穴だ――そんなに凄くねぇ。喜んでいるところ悪いが……魔力が切れちまった。しばらく寝て回復したら続きをやる」
「わかった、寝ている間に癒すね」
少し寝ると、ドラゴン君はオフトゥンに倒れ込んだ。
+
フワリと、知った香りが鼻をくすぐった。
もしやと匂いサーチを開始した……やはり、微かにミタリアの香りを感じる。
ミタリア――番の香りは甘く俺を呼ぶ。
俺だけにしか分からない香りだ。
「方向は北西だ! 行くぞリル」
「かしこまりました、リチャード様」
狼の姿のままミタリアの微かな香りを追っていった。その先に不審な馬車を見つけた。あの檻の様な馬車はなんだ? もしあの馬車にミタリアが乗っているのなら、この先の国境を越えられてはならない。
この国境、先の国ーー人と獣人の同盟国アリン、その国にを超えると人族の国になる。国境に入る前にあの馬車を止めなくては……と、向かおうとした時。
バサバサと羽音を聞いて見上げた、俺たちの前に竜人が三人降りてきて礼をした。彼らの格好からして、一人は側近で二人は近衛騎士のようだ。
「あなたがローランド国、第一王子リチャード・ローランド様ですね」
「そうだが……今は忙しい。用があるのなら後にして欲しいのだが?」
「ようと言うか……あの馬車に私たち竜人国の第三王子シック様が乗っているみたいなんです。獣人の国に一緒に訪れたのですが……目を離した隙にいなくなってしまい、探していたところあの荷馬車から王子の魔力を感じまして……」
益々、あの荷馬車は怪しいな。
「竜人国、第三王子の魔力ですか? 偶然ですね、あの荷馬車に俺の婚約者が乗っているかもしれないのです」
俺と、話しかけてきた竜人は頷く。
「リチャード様、ここは協力いたしませんか?」
「是非、協力しよう! 荷馬車の従者が獣人であれば俺の遠声で動きを止められます。その隙に荷馬車を奪いましょう!」
国境を越える前に荷馬車を止める。
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