344人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
六十四
王城に戻り騎士団に後を任せて、お風呂を済ませて、新しいブレスレットで獣化を解いた。その後、王子の部屋でプレゼントを貰った。
貰ったのは可愛い、銀製のペアリングだった。
「これを私に?」
「うん、サイズは合っていると思う……見た目が悪くてごめん」
見た目が悪い?
少しゴツゴツした指輪の感触。
「もしかして、リチャード様が作ったの? ……素敵」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
王子から手作りの貰った、指輪には獣化抑制の魔石は着いていない。指輪の付け外しはしたくないと、王子は言った。
「ミタリア、来い」
「リチャード様!」
両手を広げた王子の腕の中に飛び込むと、優しく抱きしめられた。頬と頬をスリスリ、スリスリした後、王子に優しく見つめられる。
「何もなくてよかった……俺だけのミタリア、俺だけの愛しい番……守るために父上の様に俺は強くなる」
「私もリチャード様をオフトゥン召喚と癒しで守ります」
額をコツンとくっ付け笑い合い。近付く気配に瞳を瞑ると優しいキスが何度も降った。そのキスのあと……ジワーッとお腹がいつも以上に熱を持った。
鼻と鼻をスリスリ擦り合わせて、王子に熱を含んだ瞳で見つめられて、
「もっと、触れてもいい?」
「…………は、はい」
深く、長いキスをして、夕飯までまったり王子と過ごした。夕飯後に呼ばれて――王妃、王女、王子に見守られながら、獣化して猫の姿でベッドに横たわる国王陛下の傷を癒した。
癒しを始めて数分後。
「これは凄い。医者に治るまで三ヶ月だと言われた、腕と胸の傷が塞がった……ミタリア嬢、感謝する」
「陛下、傷は塞がったかもしれませんが、無茶はしないでください」
「わかった」
陛下に頭を撫でてもらい、ゴロゴロと、役に立てたと喜んだ。
後日。
捕まったデンスは牢屋で裁判の判決を待っている。既に判決は斬首刑か人の国へ国外追放が決まっている。そして国王陛下は"人族と貿易、交流を今後一切しない"と宣言して人族と繋がる国境を全て封鎖してしまった。
そうする事によって。
人の国にいるカーエンの罪は問えないが。学園は退学処分、二度と獣人の国へ入国は許されない。カーエンはローランド国王に意見申し立てをしたが――陛下は人の国へ"この度の行い、許し難いが。我が国で罪に問わなかっただけでも良いと思え"と返した。カーエンは獣人の国での行いが、ハーロス国の国王に知られ激怒した陛下に廃嫡を言い渡された。
それを陛下から聞いた王子は。
「ミタリア、カーエンが廃嫡された、アイツは二度と獣人の国には来れない」
カーエンに二度と会わなくていいんだと、ホッとした。代わりに竜人国との交易、交流が盛んになると王子は教えてくれた。助けられた子供達はいったん王都の教会に預けられ、そこから学園に通い、成人したら獣化を生かした職種に着くそうだ。
これで獣化する私達が狙われることは、しばらくないだろう。
学園の庭園。
「シック王子、いい加減にミタリアに近付くな!」
「黒猫、ワレの方がよくないか?」
あの後、ドラゴン君ことーー竜人国の第三王子シックは私達が通う学園に留学してきて。リチャード様と二人でいると邪魔をしてくる。そして、もう一人――ヒロインの弟、リリネ君も学園に入学してきた。
姉のヒロインちゃんはと言うと幼馴染君と結婚をして、前世の記憶を生かして日本料理店を始めて、かなり繁盛しているのだとか。
私ことミタリアは悪役令嬢らしいこともせず。
ヒロイン不在のまま、のんびりと学園生活を送っている。
学園を卒業したら、王子と結婚します!
「ミタリア、二人きりで昼寝しよう」
「はい、リチャード様!」
大好きな王子と
大好きなオフトゥンの上で、
「【オフトゥン召還】」
ポフン!
《おしまい》
《最後までお読みいただき、ありがとうございました》
最初のコメントを投稿しよう!