六十四

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六十四

 王城に戻り騎士団に後を任せて、お風呂を済ませて、新しいブレスレットで獣化を解いた。その後、王子の部屋でプレゼントを貰った。  貰ったのは可愛い、銀製のペアリングだった。 「これを私に?」 「うん、サイズは合っていると思う……見た目が悪くてごめん」  見た目が悪い?  少しゴツゴツした指輪の感触。 「もしかして、リチャード様が作ったの? ……素敵」 「喜んでもらえて嬉しいよ」  王子から手作りの貰った、指輪には獣化抑制の魔石は着いていない。指輪の付け外しはしたくないと、王子は言った。 「ミタリア、来い」   「リチャード様!」  両手を広げた王子の腕の中に飛び込むと、優しく抱きしめられた。頬と頬をスリスリ、スリスリした後、王子に優しく見つめられる。 「何もなくてよかった……俺だけのミタリア、俺だけの愛しい番……守るために父上の様に俺は強くなる」 「私もリチャード様をオフトゥン召喚と癒しで守ります」  額をコツンとくっ付け笑い合い。近付く気配に瞳を瞑ると優しいキスが何度も降った。そのキスのあと……ジワーッとお腹がいつも以上に熱を持った。  鼻と鼻をスリスリ擦り合わせて、王子に熱を含んだ瞳で見つめられて、   「もっと、触れてもいい?」 「…………は、はい」  深く、長いキスをして、夕飯までまったり王子と過ごした。夕飯後に呼ばれて――王妃、王女、王子に見守られながら、獣化して猫の姿でベッドに横たわる国王陛下の傷を癒した。  癒しを始めて数分後。 「これは凄い。医者に治るまで三ヶ月だと言われた、腕と胸の傷が塞がった……ミタリア嬢、感謝する」 「陛下、傷は塞がったかもしれませんが、無茶はしないでください」 「わかった」  陛下に頭を撫でてもらい、ゴロゴロと、役に立てたと喜んだ。    後日。  捕まったデンスは牢屋で裁判の判決を待っている。既に判決は斬首刑か人の国へ国外追放が決まっている。そして国王陛下は"人族と貿易、交流を今後一切しない"と宣言して人族と繋がる国境を全て封鎖してしまった。    そうする事によって。  人の国にいるカーエンの罪は問えないが。学園は退学処分、二度と獣人の国へ入国は許されない。カーエンはローランド国王に意見申し立てをしたが――陛下は人の国へ"この度の行い、許し難いが。我が国で罪に問わなかっただけでも良いと思え"と返した。カーエンは獣人の国での行いが、ハーロス国の国王に知られ激怒した陛下に廃嫡を言い渡された。 それを陛下から聞いた王子は。 「ミタリア、カーエンが廃嫡された、アイツは二度と獣人の国には来れない」  カーエンに二度と会わなくていいんだと、ホッとした。代わりに竜人国との交易、交流が盛んになると王子は教えてくれた。助けられた子供達はいったん王都の教会に預けられ、そこから学園に通い、成人したら獣化を生かした職種に着くそうだ。  これで獣化する私達が狙われることは、しばらくないだろう。  学園の庭園。 「シック王子、いい加減にミタリアに近付くな!」   「黒猫、ワレの方がよくないか?」  あの後、ドラゴン君ことーー竜人国の第三王子シックは私達が通う学園に留学してきて。リチャード様と二人でいると邪魔をしてくる。そして、もう一人――ヒロインの弟、リリネ君も学園に入学してきた。  姉のヒロインちゃんはと言うと幼馴染君と結婚をして、前世の記憶を生かして日本料理店を始めて、かなり繁盛しているのだとか。  私ことミタリアは悪役令嬢らしいこともせず。  ヒロイン不在のまま、のんびりと学園生活を送っている。  学園を卒業したら、王子と結婚します! 「ミタリア、二人きりで昼寝しよう」 「はい、リチャード様!」  大好きな王子と  大好きなオフトゥンの上で、 「【オフトゥン召還】」  ポフン!             《おしまい》 《最後までお読みいただき、ありがとうございました》
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