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翌日のマンションは重苦しい空気が漂っていた。ドラマなどで見る黄色い侵入禁止のテープが非常階段に貼られて警察が花凛の状態や現場を確認している。
「…うーん、これは事故か?」
「事件の可能性も捨てきれませんがね。」
警察官の一人は花凛のヒールをじっと見ている。
「何か分かるか?張本?」
「ええ。武藤さん。」
立ち上がる張本。丸メガネと日焼けの少ない肌が印象的だ。手袋と眼鏡が相棒の捜査官なのだ。
「…事故の可能性も否定できませんが、ヒールの割れ方が妙なんですよ。体重がかかって割れたなら上から下にヒビが入るんですが、このヒールは横からヒビが入っている。多分このヒビが入っている所から割られたんだと思います。それに血の量も違和感があります。自然に怪我をした様には思えません。ですが…
事件としてもかなり周到ですね。マンションの防犯カメラの位置を把握して、被害者の行動パターンを理解しないと。」
張本の話を聞いて武藤は調べた情報を確認する。
「被害者はモデルやライバーをやっているようだ。ネットの中には23時から配信をする事が多い。」
「となると厄介ですね。ライバーではリスナーからの何気ない会話で情報漏れをしますから。」
「あぁ、SNSのつぶやきの中に『ごみ捨て後に配信します』と明言もあった。
ただ近隣住民とは揉め事無く、特に問題は無かった。事件当日の様子は今確認しもらっているが…怪しい人物は見たというものは居ない。」
武藤と張本が話していると、他の警官がやってきた。
「武藤さん、張本さん、見てください。こちら防犯カメラの映像ですが、踊り場からわずかですが黒いフードが見えます!」
映像の中には踊り場を通り過ぎる黒いフードの頭が見えていた。
「…となれば…。」
「かなりの確立で事件ですね。」
警察は更に調べを進める姿勢だ。
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