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プロローグ
パウロは身震いした。
いつの間にか目の前に、ローブ姿の人物が立っていたからである。
「そんなバカな…」
ここは冒険者の街の路地裏だ。浮浪者と強盗と快楽殺人者以外の者は、決して近づくことのない危険地帯で、パウロは身を守るためにずっと気を張っていた。
その人物が近づいてくると、風が吹いてフードがめくれた。
「……!」
月光の下に現れたのは、パウロと同じくらいの歳の少女だった。
艶のある緑の髪をなびかせ、鼻は高すぎず低すぎず、口も顔全体の調和を引き締め、切れ長い目の中にはライム色の瞳が宝石のように光っている。
「この手を取れ」
パウロは唾を呑んだ。少女は、その見た目とは裏腹に威圧感があった。
導かれるままに手を取った。その手触りは滑らかで、柔らかく、暖かい。
どうして、こんなことになったのだろう。パウロはその日の出来事を思い出そうとした。
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