day1

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 二人の会話を聞いていた歩が、楽しそう、と呟くと、桔梗は笑顔で二人にも言った。 「二人にも協力してもらえないかな? あんまり時間は取らせない予定だから。店を開いたのは良いけど、全部一人だから自分以外の意見をもらうことがないから、今後の店の発展のためにお願いします」  桔梗は三人に丁寧に頭を下げると、歩は日時を決めた方が段取りもスムーズになる、と提案した。清以外の三人が連絡先を交換し、日時を相談していると、清が桔梗に一言、断りを入れた。 「すんません。俺は、ちょっと親父にも相談してからでないと……」  すると、清と呼吸がぴったりなのか、歩は補足説明をした。 「そうだったー。私は良いけどー、清のお家は和菓子屋さんなんだよー。清も修行中でー。今日も休憩の合間に二人でお昼食べようって会っててー」 「……苗字がまさかと思っていたけどもしかして、清川(きよかわ)浪漫(ろまん)菓子処(かしどころ)の?」  清は無言で頷いた。 「そうか。だから……」 桔梗は何かを言い掛けて止めた。 「ま、俺は下っ端の更に下っ端ですけどね。ははっ。休憩とは名ばかりで定期的にこの時間は外に出ていなきゃならなくて」 「……清、大丈夫?」  歩が清の手を握ると、清は笑顔になった。  桔梗は、ここでも踏み込まない様にするべき線を見つけた。 「そっか、うん。大丈夫。もし良さそうなら……っと、これ。俺の連絡先ね」  桔梗は清にも名刺を渡した。清はそれを受け取り、お辞儀をした。二人は会計を済ませ、そのまま店を後にした。
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