いつも通りの日常の始まり

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 桔梗は、ばれないように女性を見た。よくよく見てみると、女性はいくつかおかしい様子だったからだ。  まず直ぐ様飛び込んできたのは、ボサボサのロングヘアーでもなく、昔懐かし分厚いレンズの瓶底丸眼鏡でもない。学生時代を彷彿させるような着古したジャージでもない。  桔梗は一旦店の奥に下がってから、ある物を手にして戻り女性の元に向かった。 「よろしければこちらを」  女性は驚いてしどろもどろになっていた。 「あ、え、あ、あの」 「よく見ると擦りむいてますね。ちょっと待ってて下さい」  またも桔梗は奥から何かを取って戻って来た。 「ちょっと失礼しますね」 「え、あ、あの!」  桔梗は、女性の踵をウェットティッシュで拭き、軟膏を塗ってガーゼを当てた。 「痛かったでしょう? あとはテープで止めて……っと。よし、これで大丈夫。さすがに片方裸足では歩くのも危ないと思うので、それ」  桔梗は最初に持って来たビーチサンダルを指差した。 「男の独り身なもんで、俺の靴は大きいだろうし。こんなので申し訳ないですけど」  そう言って、桔梗はキッチンに下がった。
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