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その昔、ホイ島に在る小屋に凡庸な水夫が住んでいた。
才や容貌に関しては同じ島嶼に住まう農夫らと比べてもどんぐりと同じく変わらず、尖った特技もない男であった。しかし親の育て方が優れていたこともあっただろう。少年期より慎ましい自尊心が露わになっていた彼は非常にできる男であった。
毎日誰よりも早く海へ出てはほどほどに海神からの恵みを受け取りに行く。近隣住民に陸上の果実や、それを追い立てる獣の容態が悪ければその叡智を駆使して瘴気を払う。誰がが不漁だったり飢えていたりしたら、己の取り分を分けてくれるような男である。故に近所の人たちからの評判はたいそう良く、気立ての良い妻を娶るのも当然であった。
さて夫妻の間には四人の子どもがいた。
三人の男児はいずれもゲルマン的な絹の如き金髪と、イタリアの晴天を閉じ込めた瞳を持っている麗しい容貌の持ち主であった。もれなくアルプス山脈に劣らぬほどの身長と岩肌のような肉体を持ち、さながらヘンギストの嫡男オイスクを中心としたアングロ・サクソン人たちの再来のようである。
そして夫妻の唯一の娘、ベルダは兄たちとは対照的に——その名の通りヒグマの仔のような焦げ茶色の髪を靡かせた、庇護欲を駆り立てる雰囲気を纏う愛らしい少女であった。
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