冬キャベツとベーコンのスープ

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「えっと……、邪魔してごめんなさい。私は自分の仕事に戻るわね」 「いつでも話においで、俺は大歓迎だから」  ボリスはそう言って送り出したが、エドはやはり何も言わなかった。二人が喧嘩をしていた風でもなかった。アリシャに素っ気ないのはよくあることだからそこは普通だったとしても、エドの態度は気にかかった。 (お腹が空いて道端の苦い物でも食べたのかしら)  エドに渡すパンに蜂蜜でも塗っておこうかと思ったが、今のエドには冗談が通じないかもしれないとやめておいた。結局、夕飯の時も、翌日のパンを取りに来たときも事務的なことしか話すことはなかった。  エドは狩りに行き二日間不在で三日目は戻ってきたなり風邪を引いたと家に閉じこもっていた。それが、四日目に来た知らせで村の人々に戦慄が走った。  昼間だというのに広間に全員集められた。全員と言っても、エド、ドク、レゼナの三人は居なかった。  広間に入るなりレオは皆に一枚ずつ布を配り、口と鼻を覆うように指示をした。訳もわからず、それでも指示には従い口覆いをすると席に着いた。 「さっき、エドと狩りをしたものが高熱と咳に苦しみ命を落としたという知らせが届いた。その者の見立てでは『冬咳』だと言うことだ」  皆が小さくどよめく。『冬咳』とは流行病で、風邪に似ているが人から人に伝染する恐ろしい病だった。必ず死ぬわけではないが、致死率は高く、老人や子供といった体力のない者はかなりの確率で命を落とす。 「不安になるのはわかるがここは落ち着いて行動せねばならん。まず、人と会うときは必ず口覆いをするように。咳をした時の唾でうつるという話があるからな。手洗いもしっかりしておけば防げるはずだ」
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