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沈んだ空気の中、お開きになり各自がやれる仕事に取り掛かった。アリシャも東の個室を整えると、料理部屋に戻り深い溜め息をついた。
(エド……何かしてあげたい。でも何を?)
料理を作るのは当たり前。いつもより食べやすくて栄養価の高いものを作るなんてことも誰でも思いつく。そうではなく、何かもっと出来ないものかと模索していた。
悩みながらにはうってつけの、時間のかかるスープの出汁作りにとりあえず着手することにした。
大鍋に野鳩の手羽元を入れるとそこに玉ねぎを丸ごと、洗った人参やその葉を入れて煮込みだした。ボコボコと湯が湧き出すと中の具材は踊らされて回転しだす。
(こうしている間もエドは一人であの家に……)
エドのことを考えると胸が痛くなり、動きが止まってしまう。
(ダメダメ。私にはやらなきゃならない仕事があるんだもの。エドにも栄養のあるもの持っていかなきゃ)
さっきドクの代わりにウィンが持ってきた野菜のカゴの中からキャベツを取り上げ切っていった。これは一旦違う鍋に入れておく。次に人参、若くて硬めのカボチャも小さくカットしていった。熟したカボチャはとても甘いが若いカボチャは甘みが少なく、スープのアクセントになってくれるはずだ。
(私に宿った力が回復だったら、エドを直ぐに苦しみから救い出せるのに)
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