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一歩また一歩。近づいていくがあのツンとする感じはない。恐る恐る手を伸ばし玉ねぎを掴んでみようとした。掴めるには掴めるが確かに布一枚分程の隙間がそこにあり、どんなに強く握ってみようとその隙間が埋まることはなかった。
(出来てる! これならいけるわ)
実際にイメージ通りの防御が張れた事に気を良くしたアリシャだったが、料理をするにはこの布一枚分程の隙間がどうにも厄介でやりにくい。仕方がなく防御を解くと、待っていたように玉ねぎがアリシャの鼻の奥を刺激し涙が出てきた。
(やっぱりちゃんと防御の力を発揮できていたのね)
涙を拭うとさっさと玉ねぎを切って鍋へと放りこんだ。次にベーコンを出してこれも小さくカットして待機中の野菜の鍋へと入れた。野菜を切り終えると鍋を火にかけ、塩こしょうを振って炒め始めた。先に炒めておくと甘みが増すので、焦がさないように丁寧にかき混ぜていく。
(各家庭用にカゴを用意したほうがいいわね。スープは壺に入れて持ち帰ってもらい家で温め直して貰おう)
ウィン夫婦、ジャン達、それにナジ親子用に壺を用意し、トイレ以外は部屋から出ないというドク夫妻用にも壺を用意した。エドのところには、前にエドの家で使われていた鍋で運ぶことにした。
準備をしている間にも出汁用スープの鍋はグツグツと煮立っていた。
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