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「私は自分に防御を張れます。だから大丈夫──って、そうだ。村の人全員に張ればいいんじゃない! なんで気が付かなかったのかしら」
自分の思いつきに声をあげたが、レオはそれはいけないと否定した。
「君の力は偉大だが村人全員にそれを施せば、それはそれで弊害があるぞ。やってきた旅人にはどうする? 噂を聞いて隣村の人もやってくれと言いに来たらどうする? 際限なくやらねばならなくなる。断れば気分を害す者も現れるというものだ」
名案だと思ったアリシャだったが、そう言われると引き下がるしかない。確かに、この世界の人を全員守るなんで無理なのだから。
「そう気を落とすな。心配はあるが、私がエドの面倒をみるよりもアリシャがその力を使い世話してやってくれた方が遥かに安全だろう。とにかく感染者を抑え込むのが重要だ。エドの元に行くことを許可する。くれぐれも注意を払って欲しい」
てっきりエドの元に行くことも断られるとしょげかえっていたアリシャは喜びの余りレオの手を握りそうになり、慌ててその手を自分の背に隠した。
「ありがとうございます! 気をつけます!」
レオは頷き「私はエドを何としても失いたくないのだ。これは……私のエゴだが、あの子の大切なものを救えなかった私のせめてもの償いなのだ」と、寂しげに微笑んでアリシャに頭を下げた。
「頼むぞ。防御の主よ」
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