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仰々しいレオに驚き、アリシャはまたしてもレオに触れそうになっていた。顔を上げてほしいと肩に手を置きそうになったのだ。
「レオさん、そんな……顔を上げてください。私は頭を下げる方の人間であって──」
「いや、アリシャよ。君が防御の主であるとわかった瞬間から、私は君に仕える運命を感じていた。我らの主だ」
困惑するアリシャに顔を向けると「まだ幼く可愛らしい我らの君主よ。目指すは穏やかな生活、人々の平和だ。どうか、道を誤らず真っ直ぐに導き給え」と言い終えるといま一度頭を下げた。
「レオさん。わ、わたしにはそのように重大な責務を全うすることなど──」
レオは顔を上げると首を横に振る。
「アリシャの定めだ。全力で我々がサポートするから安心しなさい。アリシャの平民と変わらぬ心持ちが皆を導くだろう。それでいいのだ」
レオが炉に顔を向け「パンがかなり焼けておるが」とパンを指さす。アリシャは弾かれたように炉に駆け寄り、近くにあった料理用の清潔な布でパンを掴んでテーブルに投げた。熱々で投げずに持っていたら火傷してしまう。既に火は十分に通っていて、むしろ焦げ始めたパンがテーブルでコロコロ転がっていた。
「エド用の解熱薬をとってくる。料理を焦がさぬように頼むぞ」
愉快そうに言うレオにアリシャは「はい」と返事をし、また熱々のパンを取り上げてテーブルに投げた。
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