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ナジの家に料理を届けた足で薪置場に寄った。エドの家に薪を持って行く為に抱えられるだけ持つと砂利の道を歩いていく。
やはり今年の秋は何かがおかしい。秋というより早春のような気温の高い日がある。春に見る花が咲いてしまっていることに薄気味悪さすら覚えて足早に小道を抜けていった。
「アリシャ、薪を持とうか」
宿屋の横まで来た時にボリスに声をかけられたが、もうエドの家も近いしそれを断った。
「エドの家に持っていくから私がやるわ。ありがとう」
「え? まさか家の中までは運ばないよな?」
「防御の力を使うから大丈夫なの。ご心配ありがとう」
そのままボリスの前を通り過ぎようとすると行く手を阻むようにボリスがアリシャの前にたちはだかった。村の中でも一番身長が高いボリスにそんなことをされたら全く前に進めない。
「ボリス?」
「エドのところに行かせるわけにはいかないな」
ボリスの口調はいつも楽しげで戯けているような愉快なものだ。だが、今はまるでいつもと違う。低く落とした声音が別人みたいだ。
「ちゃんと防御を張るから、本当に危なくないのよ」
「咳をしたときの唾なんかでうつるというのはあくまで通説だろ? 本当かどうか、わからないじゃないか。それに君の使える魔力だって絶対に有効だと言い切れるか?」
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