干し葡萄と蜂蜜のオートミール粥

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「どこから来たのか聞いていいか?」 「ストルカ国の外れです。南の外れにある村から来ました」 「ストルカか、やはり。して、名は?」 「アリシャ」  肉は薄くしてあったので直ぐに火が通り、また木の椀を出してベッドの方へと戻ってきた。 「アリシャか。村には戻れそうか? それとも?」  アリシャは掬った粥を口に運ばず、椀に戻して項垂れる。がむしゃらに走ってきたから道も曖昧だし、そもそも戻ったところで、誰も居ないだろう。 「そうか……」  男はアリシャの答えを待たずに理解すると、食べなさいと項垂れるアリシャに促した。 「私の名はレオだ。ここはドナ村というが、村と言っても住んでいるのは私と先程名を出したドクとその家族のみの集落だ。アリシャよ、行くところがないならここに住むといい。ああ、この家ではなく、この村にな」  スプーンで掬い上げた粥は想像より甘く、口に入れた瞬間から体の中へと染み込んでいくようだった。食欲などなかったのに、スルスルと体に染み込んでは体を温めていく。雪の中から顔を出す野花のように力強くアリシャを生へと誘っていく。 「ご迷惑をおかけするのではないでしょうか……」  一通り仕事はやれるが、アリシャは女なので仕事量はたかが知れていた。男ならば住み着いて働くとなれば重宝がられるが、女はそうもいかない。  「案ずることはない。この村はとにかく人手がない。ドクのところは四人家族、そして私だけの村だ。女も男もなく労働者を欲している」 「あの、なぜそこまで人が少ないのですか?」  この村も荒くれ者に襲われたのかと思うと再び食欲が減退していく。
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