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列車は岡山県の県境の山中を通っている、窓の外は薄く明かりが差してきている。
俺は大きく背伸びをして、寝ている葵を見る、まだ下着は出たままだ。
「ストライプがボーダーになってるぜ、、、」
聖香とは反対の、かなりの小柄だ、20歳と聞いて少し犯罪臭すら自分に感じる。
やっと「きまぐれ」が、俺の心の中に生れて来た、山中の鉄橋に差し掛かる。
ここから飛び降りれば、ご注文通りに「消えて無くなる」だろう、俺もこいつも、人生の過去も未来も。
「さて、降りるか、、、」
チラと葵を見る、寝てる内に消えればいい、別に「なにかした仲」でもないしな。
「逃げるの?」
背中越しに、ちょっと痛い言葉から入ってきた、これだから難しい「答えの無い奴」を相手にするのは。
俺は頭を掻いて、こう答えた。
「探しに行くんだよ」
「破滅でも?」
人生が詰まらないから、運試しでビルから落ちて生きてれば、ちょっと楽しいのかなと。こんな「ノリと思い付き」出てこなかった、計画だけの俺には。
あとで分かった、両親が俺を捨てた理由を。
莫大な借金が俺の人生を縛り付けない為に、戸籍を汚してでも別人の、固い人生を歩ませたかったからだと。
あとちょっとで、俺は両親以上の「計画的に先の無い設計された人生」の終着駅に着く所だった、と。
思い付き、ノープラン、それも良い、今は思う。
そう、思い付き!だ。
「世界最高の自殺場所を、探す」
「んー、、、67点」
「ふっ、厳しいな」
「何言ってるの、人のお尻見て」
「俺が見たのは、、、正面だ」
俺は飲みかけのビールを一口含み、葵に口移しで飲ませてやった。
「不味いのは、生きてる証拠」
葵は何も言わず、窓の外を見ている。
「今どこにいますか?」
聖香のボイスメッセージを、ガラスの割れたスマホで再生してみた。
削除ボタンを押し、車窓の外に投げ落とす。
「地獄の2丁目だろ、計画なら俺達はさ」
列車が動き出し、窓から朝日が覗く。
「どうする、降りるか葵?」
「乗ってる、地獄行きだって言うから」
俺は葵の下着のゴムをぱちんと鳴らした。
「計画的にノープラン」
俺は朝日に向かって笑って見せた。
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