3人が本棚に入れています
本棚に追加
「おっきいなあ」
城の前。大きな門をくぐったリジェは、警備の兵士から怪訝な視線を受けた。兵士同士の話し声がリジェの耳に届く。
「あれか。噂のクラウンは?」
「そうらしい。いくら金がいいからって、よく自分から志願したもんだ。王族のおもちゃだろう」
「第一王子の、ジナエル様が気に入ったと聞いたが。まだ成人前の女のガキとはね」
うっ。気が重たくなる。リジェはため息を吐きそうになった。しかし、それを飲み込む。そうだ。自分から望んだことではないか。侮蔑の目を送られるなんて、わかっていたことだ。
城内に入る。赤いカーペットが敷かれていた。長い廊下。奥には、左右に階段がある。
「よしっ」
気合いを入れ直すため、両手で頬を叩く。これからこのガスバタール城で、宮廷道化師として働くのだ。
最初のコメントを投稿しよう!