講談師がダークファンタジーの世界に転移した模様!

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「ちょっと待って!」  マヒルが口を挟みます。 「じゃあ、ポーは今まで私を騙してたの?」  ポーはイッショウからゆっくりと離れると、頭を下げます。 「申し訳ないポー。実はポッくんたちは、『あなたの死に花束を』の者だポー。そしてこちらの方が──」  ポーは3301と名乗っていた男を指します。男は体の砂埃を払った後、両手の拳を腰に当てます。 「ボクの名前はジト。『あなたの死に花束を』の国王だ。ポーに救世主を探すよう各国を回るように命じたのたはボクだよ。それから──」  ジトは肩の鳥を見ます。 「この子はポーの分身でね。逐一報告を受けていたというわけさ」  言い終わると、鳥は消えてしまいます。それが合図だったかのように、ポーは話を引き継ぎます。 「ポッくんの属性である『柩』の者は、自分とは別のもう一人の人物を作り出すことができるんだポー」 「身元を隠して私に近づいたのは、『不遇の天使』の情報が欲しかったからなの?」  マヒルは悲しそうにうつむいています。 「戦争で少しでも有利に戦うために、私を利用したの?」  ポーも表情を暗くします。 「それは否定しないポー。救世主の情報を集めつつ、各国の戦力や兵隊の人数などの把握も行なっていたポー」 「てことは、オレさまの手下になったのも、情報収集のためかッ! 最低だなッ!」 「でも、ポーさんはマヒル姫のことを本当に心配してたでやんすよ」  全員がイッショウを見ます。  イッショウは、ふう、と息を吐き出すと、額の汗を拭います。 「マヒル姫が妖精族さんに捕まっていたのを見た時のあの慌てぶりは、尋常ではなかったでやんす」  マヒルに向けて、ニッとはを見せます。 「単なる情報収集のためなら、マヒル姫を助けて欲しいなんて、あっしに頼むはずがないじゃないで──」  イッショウの顔は、どんどん青ざめていきます。  マヒルは訝しむようにイッショウの顔を覗き込みます。 「どうしたの? やっぱり体調が悪いんじゃないの?」 「悪いものでも食ったのかッ!」 「その逆ダラ。腹が減りすぎたんダラ」  ジトは眉根を寄せる。 「いや、それよりも、もっと事態は深刻のようだよ」 「ポーッ!」  イッショウは崩れるように両膝をつくと、そのまま地面に突っ伏してしまったのです。  全員の声を聞きながら、イッショウの意識は遠のいていくのでした……。                一部 終わり
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