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「だからユウも『表に出さないように』するばっかじゃなくていいんだ」
游太も同じであったこと。
大人として外に出さないようにしてる、とは言ったけれど、そういうものが良いばかりとは限らない。
游太はちょっと目を閉じた。
撫でられる手のあたたかさを確かめるように。
二人きりでは得られないこともある。
そして伝えなければわからないこともある。
あたたかさを信じているだけではいけないのだ。
揺らいだ気持ち、不安を吐き出すこと。言葉にすること。
現実の恋。
本の中ではなくここにあるもの。
「無人島なら良かったのに、とかは思うよ。ヒロの例え話で言うとさ」
游太は口を開いた。今度は自分の気持ちを言葉にする番だ。
「でも無人島だったらヒロと会えた可能性は少ないんだよな。とっても少ないんだよな」
「そうだと思うな。誰をチョイスして無人島に閉じ込めるかなんてのは、神のみぞ知る、だから」
弘樹も肯定してくれた。
「だったら大勢の中で選ばれた幸せを大事に思いたいよ」
手を持ち上げて、弘樹の手に手を重ねる。
手の大きさはあまり変わらない。
強いて言えば弘樹の手のほうが少しごつごつしているくらい。あたたかさは同じだけど。
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