151人が本棚に入れています
本棚に追加
その様子がおかしくて、ふ、と游太は笑ってしまった。
別に大したものがほしいわけじゃない。
むしろ些細なものかもしれない。
欲しいのは、自分たちならではのもの。
ここに存在してほしいもの。
コーヒーの香りと美味しいものの香り。
揺らいだ気持ちを、二人ならではの方法で生み出せる幸せな香りで直したい。
「フレンチトースト作って。牛乳と卵たっぷりで、蜂蜜かけたやつ」
游太の言葉に弘樹は、きょとんとした。
游太の要求があまりに普通だったからだろう。
単に朝食のメニューの希望を言っただけなのだから。
「お腹空いたし。無人島では食べられないもの、食べよう」
この世界と二人の居場所であるからこそ手に入れられるもの。
今朝はきっと特別な朝ご飯になる。
「俺がとびきり美味いコーヒー、淹れるからさ」
最初のコメントを投稿しよう!