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歪んだ感性を持った主人を誰もが見離し、皆いなくなった屋敷。
男は娘に自分の隣の部屋をあてがってやった。
「ありがとうございます。しかし一つだけお願いがあります。私の寝姿と湯浴み姿を、決して見て欲しくないのです。何があっても……」
その日から娘は男のもとで暮らし始めた。
約束通り娘が眠る前と湯浴みの際は必ず声を掛けさせ、その間は決して部屋に入らないようにした。
娘は食料の買い出しにもその姿のため、いつも後ろ指をさされ、ときに石を投げつけられた。
しかし泣き言も恨み言も言わず、娘は男の想いに従った。
「貴方様が美しいと思うものは私も受け入れましょう。私にどうぞ教えて下さい……」
娘は男と生活をしながら、彼の考えすらも受け入れようとした。
「お前は常に私のもとにいてくれる……誰もが私を忌み嫌ったというのに」
彼は娘をいっそう大切にし、危険に晒される買い出しには必ず娘のすぐそばに付き添ってやった。
そのうち彼はよく、こう口にするようになった。
「血……。血は美しいものだ。これ一つで生と死を分けるのだ。なんと気高いものか……」
「貴方様は血を美しいと思うのですか?」
ある日娘がそう問うと、彼は恍惚の笑みを浮かべて言った。
「そうさ、流れる血は赤く美しいのだ……」
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