滝に溶けて声となれ

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「本当はさ、学級委員だってやりたくなかったでしょ」 「え……?」  五ヶ月前。  高校二年生になり、新しいクラスで学級委員を男女一人ずつ決めることになった時。  一年生から同じクラスだった速水(はやみ)さんに推薦されて、クラスも満場一致で私に決まった。 「やっぱり川崎(かわさき)さんが適任だよねえ~。『真面目!』って感じだしぃ」  クラスメイトの拍手の中、速水さんはニヤリと笑っていた。  彼女は派手なギャルのグループにいて、私とは特に仲が良かったわけじゃない。  でも彼女はことあるごとに、私に頼み事をしてくる。  今日だって、そう。 「瑞希(みずき)っちしか、頼れる人いないんだぁ。デートなのよ! 瑞希っちは彼氏いないし帰宅部だし、予定ないでしょー?」 「いや、今日は……」  早く帰って、大好きなバンドのCDをフラゲしなきゃ。いつも、初回限定盤はすぐに売り切れちゃうしな……。 「えー、何か予定あるの? 瑞希っち、冷たーい。クラスメイトでしょー?」  心臓がドクンと揺れる。 「瑞希ちゃんって冷たーい。みんな、もう無視しよう」  過去に誰かが言った言葉と、リンクする。 「大丈夫! 何も予定ないから! デート楽しんできて」  慌ててそう言うと、さっきまで不機嫌そうだった速水さんの顔が、満面の笑みへと変わる。 「本当!? ありがと、助かるー! さすが学級委員!」  彼女が帰っていった後、小さくため息をついて日誌を広げる。  すると、教室の出入口に立つ彼を見つけたのだ。よく考えたら、彼も今日の日直当番だった。  特に雑談もなく、書く内容だけを確認し合いながら、私が日誌へ書いていく。    そして、今に至る。
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