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彼に問いかけられた言葉を、私は心の中で繰り返す。
本当は、学級委員なんて……。
「いや、えっと、私は別に……」
次の言葉が出てこない。
そんな私を見て、彼はため息をついた。
「川崎はさ、もっと正直になったほうが良いよ」
「正……直?」
「自分に正直に。嫌なことをちゃんと『嫌』って言ったり、『自分はこうしたい』って口にするの」
「私はちゃんと言ってるよ? 『こうしたい』って……」
「それって、本当の気持ちじゃないでしょ?」
本当の……気持ち? 私の気持ち?
この人は、なぜ私にそんなことを言うんだろう。
私はただ、誰かのためにと思ってやってるだけなのに。
「た……、橘くんには関係ないでしょ。私の気持ちなんて、私にしかわからない」
勢いで言った後に、ハッとする。
しまった。ちょっと言い過ぎたかな。
恐る恐る、彼の顔を見る。
彼は頬杖をつき、窓の外を眺めていた。その表情からは、何の感情も読み取れない。
そうだ。他人の心なんて、わからない。
だからこの人だって、私の本心をわかるわけがない。
「どっか、ご飯でも食べに行く?」
「……えっ?」
彼の唐突な言葉に、私は動揺する。
え、ご飯? 私と……?
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