11人が本棚に入れています
本棚に追加
「食べに行くんだったら、どこが良い? 何が食べたい?」
「えっ……。いや、なんで急に……」
「『日直当番が終わった後、ご飯食べに行かない?』って聞いてるんだけど」
「や、私は……」
今まで、男子と二人きりで帰ったことなんてない。
ましてや、この人と。それは、正直困る。
「ラーメンとハンバーガーだったら、どっち?」
「あの、どっちでも……」
すると彼は、固まっている私から日誌を取り上げた。
「なーんてね。冗談」
「えっ!?」
「今、俺からの誘い、断れなかったじゃん。ラーメンとハンバーガーの質問にも、『どっちでも』って言ってるし」
「それは……」
「そういうところじゃないの」
そう言うと彼は私に背を向け、日誌の続きを書き始めた。
なんだか、胸の奥がチクチクと痛い。
「……ほら、帰っていいよ。日誌は、俺が書いておくから」
「え……。でも」
「本当は早く帰りたかったんだろ? 日誌くらい、俺一人でどうにかなるから」
橘……くん。
この人の言葉は、なんで心を揺さぶるんだろう。
一見、キツい言葉を投げているようでいて、結局いつも私のことを助けてくれるんだ。
学級委員が私に決まった時だって、そうだった。
男子の学級委員決めの時、彼が自分で手を挙げて、後で「俺とだったら苦労しないから」って言ってくれた。
実際、彼が学級委員のパートナーで良かったと思っている。
一人でクラス全員分のテキストを運ぼうとしていた時も、どこからともなく彼がやってきて、ほとんどのテキストを持ってくれた。他の男子なら、私に任せっきりだっただろう。
最初のコメントを投稿しよう!