13.彼の街

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13.彼の街

努が住む街に来るのは何度目になるだろうか。 風景も道も見慣れている。 私はここに来るたびにスーパー原田によって お買い物をするのが好きだ。 努と手をつないで買い物をするときの幸せったら…。 思い出すだけでもほっこりする。 最初は茶色い街だと思っていたけど 夏の終わりには稲穂がこうべを垂れて街中金色に輝く様は 涙がでるほど感動した。 出来ることなら私はここに努と住みたかった。 住んだらこうしよう、ああしようって考えてた。 いろんなことが解決するのならここで生活をしたかった。 でもどう考えても私が来るにはリスクが高すぎる。 病気ひとつとっても私は身動きが取れない。自由がない。 私の本当の気持ちは努をここにいさせてあげたい。 私のために努がすべてを捨ててくるのは勇気がいると思う。 私のことをよっぽど信用していないと無理だろう。 だから行くといえない努の気持ちもわかってるから 今まで言えなかった。 でも言わなきゃいけなかったんだとおもう。 言わなきゃ伝わらないし、ちゃんと気持ちを伝えるべきだったと。 今さら反省しても仕方ないんだけど。 長作駅に携帯を取りに行ってから、駅のスタバで一息ついて考える。 さて…。努はどこにいるのかな…。 もしかしてやっぱり入院してたりして。 努の携帯のカバー。お揃いで買った。 眺めていると急に涙がこぼれた。 努に会いたい。こんなに愛してるのに別れるなんていや。 私は追い返されるかもしれないと思いながらも 努が通う病院へ行くことにした。 努と連絡が取れなくなってから 1ヶ月が経とうとしていた。
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