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次の日、花村の葬式が町の葬祭センターで行われた。クラスの子供達も授業を中断し参列した。みな俯き、涙ぐんでいた。
「なんか、こっちまで悲しくなって来ますね」
若林も目を潤ませた。
僧侶による読経が終わり焼香が始まった。児童も列に並び焼香をした。
「あ、昨日の店の子ですね。由衣ちゃんでしたっけ?」
「ああ。それと横にいる子、見覚え無いか?」
「化粧品店の娘ですね。仲良しだったんだ」
「だな」
由衣は先生に似合うと言われた薄いピンクのリップクリームを付けていた。そして遺影を真っ直ぐに見つめお辞儀をした。小学生とは思えないほど凛としていた。
「由衣ちゃん、だね?」
焼香を終えた由衣に真田が声を掛けた。
「誰ですか?」
由衣の隣にいた女の子が真田を睨みつけた。化粧品店の娘だ。場にそぐわないピンクの口紅をしていた。
「君は由衣ちゃんのお友達かな? お名前は?」
「……美紅」
「なるほど。化粧品店の娘にはぴったりの名前だ」
2人の少女は警戒し真田を見た。
「おじさん達は警察官だから安心してね」
少女達の表情は一瞬で固まった。
「2人は仲良しなんだね」
「だったら何?」
「美紅ちゃんの口紅、先生とお揃いだね」
「……!」
慌てて両手で口を隠した美紅に真田は優しく言った。
「先生、綺麗だったよ。ありがとう」
真田がそう言うと2人は顔を見合わせた。
「見たの?」
「うん、見た」
「……」
女の子達は一目散に走り去って行った。
「真田さん、もしかして今の……」
「自供だな」
「え、じゃあ着せ替え犯人は由衣ちゃん達?」
「だな」
「そうか、子供だから下着にまで気が回らなかったんだ! 大人だったら絶対にフリルやレースの……」
「行くぞ」
真田は歩き出した。
「でも遺族には知らせた方がいいですよね? 誰が化粧したのか不気味がってましたから」
「だな。本当の事が分かれば、きっと喜ぶだろう」
「ですね」
少女2人は手を繋ぎ走った。
「バレちゃったかな?」
「バレても大丈夫。私達まだ子供だから逮捕されないよ」
「そっか。良かった」
少女2人は先生の家に遊びに行った時の事を思い出していた。
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