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宿題見せてとか、昨夜のテレビ見た? とか。朝の教室は賑やかだった。少し大人になり始めた女子は髪型やメイクにも興味を持ち始めていた。
「あー、お前化粧して来てる! 先生に言いつけてやる!」
「これはリップ。化粧じゃないの!」
リップクリームなら許される。なので女子たちは色付きのリップクリームを塗る。最近は小学生向けの雑誌にも化粧品の付録が付いてくる。小学生ながら化粧の仕方もマスターしている。
「全然似合ってねーぞ!」
「うるさい! あんたみたいな子供には分かんないのよ!」
まだまだ子供感の抜けない男子は女心など分からない。怒る顔が見たくてわざとからかう。
そんないつもと変わりのない賑やかな教室も、先生が入って来ると一瞬で静まり返る。
「みなさんおはようございます。朝のホームルームを始めます」
そう話し始めたのは教頭先生だった。子供たちはヒソヒソ話を始めた。このクラス、5年3組の担任は若い女の先生、花村のはずだ。
「えー、花村先生は学校をお辞めになりました。次の担任が決まるまで私が担任をします」
それを聞いた子供たちは尚更お喋りを始めた。何で急に辞めたの? クビになったの? それとも結婚?
「静かに、静かにしなさい!」
久しぶりにクラスを受け持つ事になった教頭は子供をまとめる事に苦戦していた。しかしそれよりも、担任の”死”をどうやって子供たちに伝えるべきか。そちらの方が憂鬱だった。
「真田さん、事件はあっという間に解決ですね」
刑事になりたての若林が先輩刑事に話し掛けた。
「だな」
ベテランの真田は白髪の混じった頭を掻きながら無愛想に応えた。
被害者は花村かなみ。26歳。小学校の教師をしていた。その花村が今朝アパートで首を締められ死んでいるところを発見された。時間になっても出勤して来ない事を心配した学校からの通報だった。
死亡推定時刻は金曜の夜10時頃。週末だったため発見されるまで2日以上掛かってしまった。
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