瓜二つ

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 リュックの中から教科書やノートを出す。机の青い引き出しに入れると頬杖をついて前を見た。黒板に今日の日付けが書かれている。水曜日。美容院はやっているだろう。  ホームルームが始まる直前に澄江が来た。これでは話ができない。お昼休みに訊くしかなくなった。斜め前に座っている木田を見る。ストレートの髪はさらさらだ。今日は寒いからか冴香と同じくベストを着ている。後ろ姿を見るだけで胸がおかしくなる。  今日は体育がない。冴香はそれだけで救われた気分になる。勉強は努力すれば成果はついてくるのに運動神経だけはどうにもならない。体育があるのは月曜日と火曜日だ。昨日は火曜日だったので体育があった。リレーをやったのだが、冴香のチームは冴香のせいで負けたようなものだった。  四時間目が終わった。澄江が給食を食べて片付け終わったところにそっと近づいた。 「澄江ちゃん、話があるんだけど、ここじゃ人に聞こえるから視聴覚室に行かない?」 「え、呼び出し? (こわ)」 「そんなんじゃないよ。例の件について訊きたいの」  澄江は肩を竦めて「分かった」と言った。
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