瓜二つ

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 視聴覚室は一階にある。冴香は引き戸を開けると電気を点けた。暗幕カーテンが閉まっていて真っ暗だったからだ。 「話ってなに?」 「私が木田くんに会う理由を知りたいの。澄江ちゃん、木田くんと付き合っているの?」 「まさか。木田くんには好きな子がいるんだってよ。大人しい子だっていうから私じゃないよね。男子に聞いたんだ」  好きな子がいるとはショックだ。胸がなにかに圧迫されたようになって頭がくらくらする。 「じゃあ、なんで会うの?」 「木田が私に訊きたいことがあるって言うんだもの。髪を切るからばれるかばれないか実験するのにちょうどいいと思って」  随分と適当にターゲットを決めたな。冴香は眉を下げた。そのとき誰かが視聴覚室のドアを開ける音がした。見てみると男の教師だ。許可なく入ったことを怒られるに違いない。 「二人とも、ここで何しているんだ?」 「ちょっと内緒の話を……」  冴香は言い淀む。 「ここは無断で入るのは禁止なんだぞ。ん? 双子の姉妹か?」 「いえ。クラスメイトです。ここ使ってすみませんでした。今すぐ出ます」  澄江はそう言って冴香の手を引っ張った。教師はきょとんとしていた。  一年生のクラスは二階だ。教室へ戻るともう五時間目の始まる時間だった。冴香は澄江にもっと詳しい話しを教えてもらいたかったが仕方ない。
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