23人が本棚に入れています
本棚に追加
午後のホームルームが終わった。部活に行くためリュックを背負う。図書室からそのまま帰るので授業道具も含め荷物すべてが揃っている。冴香は階段を上がった。四階まで行き図書室の引き戸を開ける。女子が二人と男子が一人来ていた。花枝も居る。冴香は花枝の隣に腰掛けてリュックの中から原稿用紙とペンケースを出した。花枝が笑顔で言う。
「小説は書けてる? 私はまだ全然すすんでない。途中まで読んでくれる?」
「うん、いいよ。私も筆が遅れてるから交換」
冴香はそう言って原稿用紙を渡した。花枝も冴香に渡す。二人は黙って真剣に読んだ。
「冴香ちゃんの凄くよく書けてるよ。ここに出てくる男の子って誰かモデルがいるの?」
「いない。いない。想像だよ」
本当は木田を想いながら書いているのだが、そんな恥ずかしいことは口が裂けても言えない。
「花枝ちゃんこそ凄く上手いじゃない。続きが気になるな」
花枝は嬉しそうに目じりを緩めた。
部活が終わって家に帰る。「ただいま」を言ってすぐ二階の自室に行くと、電気を点けた。リュックを降ろして椅子に座る。今日は隣から音楽が聴こえてこない。姉はまだ帰ってないのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!