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澄江は髪を切り終わっているはずだ。冴香は明日の夕方にスカートを短くしてブラウスの第一ボタンを開けて澄江に変身しなければいけない。机で悩み両腕に頭をうずめていると姉が帰って来た音がした。すぐに音楽が聴こえてくる。冴香は制服のまま隣の部屋をノックした。
「はい。誰?」
「私。冴香だよ。相談があるの」
ドアが内側から開いた。文香が優しそうな顔をして立っている。冴香は助けを求めるように言った。
「変身のこと、男の子に呼び出されてるんだって。澄江にとって入れ替わるのは深い意味はないらしいの」
「え? 告白とかだったらどうするの?」
木田には大人しい好きな女の子がいるらしい。澄江ではないだろうがそれは恥ずかしいからついた嘘で、万が一そんなシチュエーションになったら冴香はショックでどうなるか分からない。でも呼び出しっていったら大抵そのパターンだ。澄江だってそれは気づいているだろう。ということは澄江は木田に恋愛感情を持ってないということだ。その点は安心だ。
「うまく誤魔化すしかないよね。木田くんだってそんなこと知ったら可哀そう」
「告白ムードにもっていかなければいいんじゃない。ずっと鼻歌を歌ってるとか」
「もう、お姉ちゃん、私にそんなことできると思う?」
「練習、練習、冴香、好きなバンドがいるでしょう」
夕飯を食べ、寝るまで話し合ったがいいアイデアは鼻歌くらいだった。
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