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図書室は四階建ての校舎の最上階で校舎に向かって一番左端だ。入ってすぐ右に図書委員か教師が座るカウンターがあり、西側に頭より高い本棚が向かい合わせになって図書室の幅いっぱいに並んでいる。カウンターと本棚の間に横長の机が縦になって二列合わせて全部で八列置いてあり、一列分のテーブルには椅子が四脚並んでいる。冴香は部員がまばらに座っているのを見とめて北の本棚側に座った。斜め前に同じ一年生の前橋花枝が座っている。冴香は花枝となら少し喋る。
「冴香ちゃん、この前勧めた本は読んだ?まだ借りっぱなしになっているけど」
花枝は二重の目を細めて優しく訊いた。
「読んだよ。今日返そうと思っていたんだ。面白かったからまた同じ作者の本を借りようと思うの」
冴香はそう答えると学校指定のリュックから文庫本を出した。パラパラと捲って机の上に置く。
「そう。本をたくさん読むと小説が上手くなるんだって。私は今度、純文学を書いているよ。冴香ちゃんは?」
「私も純文学。でもまだ原稿用紙三枚だよ」
「この前は三十枚だったよね。あれ書いたばかりだから、のんびりいこうよ」
花枝はそう言うと立ち上がって本棚の方へ行った。冴香は今度は原稿用紙とペンケースを取り出し小説を書き始める。
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