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文芸部は女子のほうが多い。女子が十人なのに対して男子は五人だ。顧問は三十代の男の教師で二年生に国語を教えている。優しい先生だが怒ると怖いという話だ。
シャープペンはグレーのボディで質素なものだ。小説を書いていると芯が終わった。ペンケースから芯が入ったプラスチックケースを出す。そのとき澄江が図書室へ入って来た。澄江はバスケ部だ。普通なら部活中のはずである。カウンターに座っていた顧問が話しかける。
「どうした? 今、部活中だけど本でも借りに来たのか?」
「はい。今日はバスケ部が顧問の都合で練習がないんです」
部活中だが図書室は誰でも借りに来ていいことになっている。澄江はみんなが座っている席の真ん中を通り抜け本棚のところへ行った。花枝が身を乗り出して小声で言う。
「あの子、冴香ちゃんと同じクラスじゃない?」
「うん、そう」
「そっくりだよね。双子みたい」
本当に自分でもそう思う。春の測定では身長と体重まで一緒だった。澄江が髪を切ったら冴香に変身できるだろう。
澄江が一冊の本を持って窓際にいる男子に話しかけた。
「これ、借りたいんだけどどうしたらいいの?」
「あ、先生のところへ持っていけばいいよ。ノートに名前と日にちを書いて本の背表紙の裏に日付の印を押してもらうんだ」
男子は顔を赤らめながら丁寧に説明した。澄江はお礼を言って顧問のところへ行く。手続を済ませると冴香の方を振り返って首を廊下に振った。廊下に行けということなのだろう。
澄江が図書室を出たので冴香は「トイレに行ってくる」と言って廊下に出た。窓を背にして澄江が立っていた。
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