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「私、明日に美容院の予約をしたから。冴香はスカートのウエストを三回折って、シャツの第一ボタンは開けること。学校に来たら私の席に座ってよ」
「そんなことしてばれたら大変」
「大丈夫。明後日はテストも体育もないでしょう。部活はお互い欠席しよう。学校が終わったら東公園に行って。木田くんが待っているから」
木田とは冴香が思いを寄せている子だ。同じクラスであまり喋ったことはない。木田はサッカー部で目が大きく鼻が高い。唇は薄くいつもにこにことしている。木田が待っているということは澄江が呼び出したか木田が呼び出したかのどちらかだ。もしくは二人は付き合っているのか。
澄江が背にしている窓の外がオレンジ色になって来た。もう部活の終わる時間だ。冴香は「明日の御昼休みに返事をする」と言った。澄江は頷いて帰って行った。
図書室へ戻ってペンケースや原稿用紙を片付ける。花枝が不思議そうな顔をして言った。
「本当にトイレだったの? あの子、目で合図していたように見えたけど」
「うん。気づいた? ちょっとした話しがあったの」
「だから本を借りに来たのかな」
花枝が首を傾げる。
「さあ? でもあの作者の本は人気あるよね。私も読んだけど面白かった」
話しをしながら二人とも片付け終わった。周りを見るとみんなリュックをテーブルの上に置いて帰りたそうだ。顧問が「じゃ、今日の部活は終了」と言うと窓際に座っていた男子が我先にと図書室を出て行った。
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