瓜二つ

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 冴香は下駄箱からスニーカーを出して履いた。学校指定の紺色に白のラインが入ったものだ。校舎を出るともう薄暗い。夏は明るかったのに季節の移り変わりは早い。昼間の気温が暖かくても季節は確実に移ろっている。  住宅街を歩いて帰路に就く。帰りながら澄江に変身することを考えた。公園で木田くんに会う。どういう経緯で会うことになったのか分からなければ対処の仕様がない。明日みんながいないところを見計らって澄江に訊くしかないな。冴香はそう思いながら自分がこの計画に乗り気なことに気づいて自嘲した。変身してでも木田と話ができるのは嬉しい。想像するだけであがってしまう。  細い路地に入って家に着いた。白い外壁の二階建ての家で庭には花や木が植えられている。冴香は玄関の鍵を開けて中に入った。芳香剤の匂いがした。 「ただいまー」  自室へ行ってリュックを机の横に置く。隣の部屋からは人気のバンドの曲が聴こえてくる。高校生の姉がCDで音楽を流しているのだろう。冴香は変身のことを姉の文香(ふみか)に相談しようと思った。姉は勉強も運動も長けているし、性格もいい。冴香は文香を信用している。
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