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六時半になったら文香が二階から降りて来てリビングの戸を開けた。冴香も文香も制服だ。長そでのシャツに夏用のベスト。二人の大きな違いはスカートだ。冴香は紺色だが文香は紺と赤と緑のチェックスカートだ。
「おはよう。お姉ちゃん」
「おはよう。冴香。変身のこと。なんで木田くんに会うのかちゃんと訊くんだよ」
「うん」
家を出て住宅街を歩く。今日は曇りだ。天気予報だともしかしたら夕方に一雨降るかもしれないと言っていた。学校に傘があるから大丈夫だ。
歩いて十五分の学校に着く。校門を抜け、コの字型をした校舎の真ん中にある下駄箱に行くと文芸部の男子がいた。身長も体重も普通。顔は垂れ目で可愛い子だ。冴香と同じ一年生だがクラスが違う。名前は宮本だ。冴香は目が合ったので挨拶をした。
「宮本くん、おはよう」
「あ、滝川、おはよう。今日も部活来るだろ」
「うん、宮本くんは?」
「僕も行く。昨日図書室に本を借りに来た子、滝川にそっくりだな。従妹かなにか?」
「他人の空似」
冴香は微笑んだ。これで澄江が髪を切ったら区別がつかなくなる子がいるに違いない。文芸部の花枝のような親しい友人は別にして。
「じゃ、私、教室に行くね」
「ああ、僕も」
教室へ入ると半分くらいの子が来ていた。冴香は廊下側の真ん中の席にリュックを置いて澄江の姿を探す。まだ来ていないようだ。朝練をやっているのかもしれない。
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