瓜二つ

　秋も本番になってきた頃、変身を持ちかけられた。変身というと芋虫に変身だとか、正義のヒーローに変身だとか、そのように思うだろうがそうではない。ごく身近な友達に化けろと言われた。相手は遊びのつもりだろうが言われた本人は心臓が音を立てそうなほど戸惑う。だって変身して秘(ひそ)かに好きだった子と公園で会うというのだから。
常日頃から澄江(すみえ)に似ていると言われていた。冴香(さえか)は嬉しいがそれに反して複雑な気分だった。澄江に似ていると言われるのは容姿だけであって性格や運動神経ではない。冴香は暗くて友達もいないし運動はまったく駄目だ。でも頭脳だけは秀でている。成績の順を後から数えるほうが早い澄江と違って成績常にトップだ。
　澄江とは小学生の頃から同じ学校だった。今は中学一年生。二人の通う中学は付近の小学校の三校から集まってなる。違う小学校から来た子は最初の頃に澄江と冴香をよく間違えたが十月になった今はもう誰も間違える子はいない。澄江は髪を伸ばして左右で二つに束ねていた。冴香はショートカットだ。