4人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
プロローグ 人間になりたい、彼女たちの生き様
相も変わらず人は過ちを繰り返している。大体の繰り返す者は、ごく一部の欲を拗れさせた者、権力を振りかざす者、利己主義の塊である事が多いとも言える。
そんな世の中に千年に一度、咲く花がある。
優曇華とよく似た、しかし花がごく稀に花開くウドゥンバラ。
西暦4021年
長らく続いた戦乱の世が終わり、人類は再び安定の経済界を再構築し始め、交代以前以上の繁栄を向けて邁進し続けて千年の時が流れていた。
人類の世界と大自然は隔絶され、都市部は無限とも思える成長を遂げつつあった。
そのような街の風景は、よくよく見ると暗部が見えていた。
それは人間の心の明暗を分けているようにも、見えていた。
その街に連なる、ビルからビルへ、住宅から住宅へ、屋根を飛び交うひとつの影があった。
その影はとある雑居ビルの屋上に着地し、サッと街を眺めては、少し郷愁の想いを感じた。
彼がかつて生きたはるか昔と同じ風景が、眼前に広がっている。
当時の相棒とも別れたのもそのはるか昔。
それが何年前の事かと誰かに問われて、答えても誰も信じないであろう年代であった。
男は暗い灰色のスポーティーな短髪に、両耳にビッシリと様々な形をした黒いピアスが連なっている。
全身の肌は病的に白く、身に纏った黒々としたジャケットなどで更に際立って見える。そして何よりも特徴的なのは、透き通った紅い虹彩の瞳。
人間には非常に珍しい、アルビノだった。
何とも言えない、得体の知れない気配を察知し、それに惹かれてその気配の方角を目指していた。
最初のコメントを投稿しよう!