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イケメンと付き合います
「冬休み明けて学校に行っても、芦花が男だったことを覚えてるやつは一人もいなかった。お前も段々自分が男だったことを忘れて話が噛み合わなくなってきて、だから俺は次第に距離をおくようになったんだ」
天馬が苦しそうに顔を歪めた
「‥それをずっと気にしてた。もし、お前が男に戻ったら、今度こそ絶対に伝えようって」
カウンターの下で、天馬が芦花の手に触れた
触れた手から熱が伝わって、芦花の心臓を強く打った
「男の時から、お前を親友だなんて思ったことは一度もない。ずっと好きだった。俺と付き合ってください」
芦花の心に、高校時代の自分の感情が波のように押し寄せてきた
芦花も、ずっと天馬への想いを大事に抱えていた
だけどあの大晦日の夜、陸上部員の女の子を慰める天馬の姿を見て、感情が溢れたのだ
「俺、女将さんからもらったお年玉を袋ごと賽銭箱に投げ入れて、『ブスでもデブでもいいから女の子にしてください』って神様に願ったんだ。女の子にさえなれれば、天馬は俺を好きになってくれるんじゃないかと思って‥」
芦花の瞳に涙が溜まっていった
「バカなやつ」
天馬は切なそうに芦花を見つめると、人差し指で芦花の涙をぬぐった
※※※
すっかり伸びてしまったカレー南蛮を二人ですすった
「これ、バイト先のと同じ味じゃね?」
「あそこ閉店しちゃったからな。いつかまたお前と同じ味を食べられたらと思って、いろんなとこのカレー南蛮を食べ歩いてたら、たまたまここを見つけたんだよ。やっと願いが叶った」
常に何かに対して怒っていた天馬の顔が緩み、やっと昔の面影が戻ってきた
「で、いつ男に戻ったの?」
芦花は昨日屋上で『イケメンと付き合いたい』と願ったことを話した
「今回も叶いそう?」
天馬がニヤニヤと芦花を見た
その憎たらしくも愛しい顔を見て、芦花は意地悪をしたくなった
篠崎や安斎とのことを話したら、天馬は焼きもちを焼くだろうか
芦花は明日出勤したら、朝イチで千円札の紙飛行機を飛ばそうと思った
次の願い事は決まっている
【いつまでも天馬といられますように(性別はこのままでいいです)】
終わり
あとがき
2021/11/13
今回は『超妄想コンテスト【変身】』に狙いを定めてこちらの作品を書きました
そのため、この数日は他作品の更新がおろそかになり、申しわけありません💦
こちらの作品は、これから文字数や、文章、細かい設定その他を推敲してから完結設定したいと思います
とりあえず第一稿、というか大まかな筋としてはこんな感じで終わらせたいと思います
2021/11/15
8000文字に収めるのがこんなに難しいとは思いませんでした!が、なんとか8000文字ちょうどに収めましたああ!!
表現に足りないところがあるのは重々承知の上、これで最終稿といたします
それでは
はなざんまい
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