選択は「逃げる」一択で

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選択は「逃げる」一択で

   俺は胸ポケットから時計を出し、時間を確認する。  ……げっ、もう2時間も経ってる。  急いで立ち上がり、階段を上り始めた……  ザラ先生、お願いです。  1段上るたびに槍を壁面から飛ばすのは止めてください。よけるのが大変です……  心の中でザラに懇願するが、もちろん罠が止まるわけもなく、目の前や喉元をかすめる槍をよけながら……たまに刺さりそうになるが……まぁ、なんとか1階にたどり着く。    ああ、光だ……明るいって素晴らしい。  朝からどんだけ地下にいたんだよ……  王宮1階の明るさに俺は目を細めた。  だが、地下から脱出できた事に喜んでいる暇はない。今日という日はまだ始まったばかりなんだから。  学園に行く為、足早に歩き出すと、前方のめちゃくちゃ遠くに人影が見え、ビュン!! と何かが風を切る音がし、動きを止める。  やっべぇ……  まわれ右をして走って逃げようとするも、先程の風を切った音の物体が俺の顔のすぐ横を通り過ぎ、更に奥まで飛んでいき、壁に突き刺さっている。その物体を凝視し、俺の冷や汗が止まらない。  剣、だ。  遠くにいたはずの男がいつの間にか真後ろに立っており、顔を寄せ、俺の耳元で囁く。 「王子……背中を見せてはいけませんって、教えたでしょう?」  聞き覚えのある低く鋭い声に、背中にゾクリと冷たいものが走る。  この声……いや、最初からわかっていたけど。  こいつから逃げるなんて不可能なのか!?  我が国最強の剣の使い手。鉄壁のブライトン兄弟の片方……  エドワード・ブライトン!!
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