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最強騎士に勝負を挑む
精悍な顔をしたエドワードがニヤリと笑い、剣を投げ、俺の近くの壁に刺す。剣を手に取れ。ということだろう。
「王子、勝負しますか?」
「エドワード、俺は学園に行きたいのだが……」
この状況から逃げるなんて無理と思いつつ、一応、希望を口にしてみる。
「いいですよ? ああ、覚えておいて下さい。俺より剣で弱い奴にクラリスはやりませんので」
お前に剣で勝てるやつなんて、この世にいるかぁぁ!
あと、「やりません」って、なんでお前に権限があるんだよ!
「では、私の不戦勝ってことで。こんな男に大切なクラリスは任せられませんね」
俺の肩がピクリと動く。
エドワードが壁に刺さった剣を引き抜く為、近づいてきたが、その前に俺は剣を取った。
「やる」
我が国最強の男と勝負なんて、無謀なのは百も承知。だが、不戦勝なんてさせない。
クラリスは言っていた。
エドワードとザラは特別なんだ、と。
俺から見ても、お前達3人は特別な絆で結ばれている様に見えた。まるで前世から繋がっていたかのように。嫉妬しないと言えば嘘になるが、クラリスは俺を選んでくれた。
「いつか誰かと結婚する時はエドワード様とザラ様に祝福して欲しいんです」
昔、クラリスは夢見るように語っていた。
両想いになった今。誰かと……なんて曖昧な存在ではなく、俺となんだ。
俺はその願いを叶える。
2人にクラリスの結婚相手として俺が認められれば、心から祝福してくれるだろ?
勝てる見込みなんて全く無いが、不戦敗なんて言語道断。
お前らに俺の事を絶対認めさせる。
俺はクラリスの喜ぶ顔が見たいんだ。
「エドワード、俺は勝負する」
剣を構え、エドワードに勝負を挑む。
「ほう……王子、なかなかいい顔つきになりましたねぇ」
余裕しゃくしゃくの顔をして、ニヤッと笑い、剣を構えるエドワード。
勝負は……
俺は床に倒れていた……それも10回目だ。
そりゃそうだ。やる気だけで最強の騎士に勝てるわけがない。エドワードの力は本物だ。最強との呼び声が高いのも伊達じゃない。もう俺はズタズタのボロボロ……それでも……
「エドワード……まだ……俺はやれ……る」
俺は立ち上がる。ズタボロの体に鞭打ってでも立ち上がり、再び剣を構える。
クラリスの願いを叶えるために。
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