読んでいません、冤罪です

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読んでいません、冤罪です

 今日のダンジョン攻略は何だったんだ……?  俺が呆然と立ち尽くしていると「ザラサマーー」とまたも聞き慣れた声が聞こえてくる。    くるな、ぴー……お前がいるとややこしくなる。  もちろん俺の願いは届かず、ぴーはエドワードの肩にちょこんと止まる。   「おう、久しぶりだな。ぴー」 「エドワードサマ、コンニチハ。アレ、エロアホオウジ、マダイタノォ」  くっ……憎たらしい奴だな。 「何だ? エロアホ王子って?」  俺はエドワードの疑問に目を見開き、しまった!とぴーを見据える。    まさか……まさか…… 「アノネー」  お、おい……まて…… 「チカノショコデネー」  言うな! 言うなーーー! 「コドモノツクリカタノ、ホンミテタノォォ」 「ちょっとだけだぁぁぁ!!」  ぴーが暴露するのと同時に俺は叫んだ。  3人と1羽の間で沈黙が流れる………… 「えっ?」  これは俺。 「えっ?」  これはエドワードとザラ。 「えええ……」  そして、再び、俺。  てっきり、クラリスとの……まぁ……その……いろいろが頭に浮かんだ事を暴露されると思った俺は早まってしまったらしい……読んでもいない「子供の作り方」を自ら読んだと言ってしまったに等しい状況になってしまった。 「子供の作り方……ねぇ」  エドワードとザラが顔を見合わせ、呆れた声を出し、俺はカァァァと全身が赤くなる。 「よ、読んでません。読んでません」  急いで否定するも、2人とも全然信じておらず、エドワードは俺の肩に手を置き、憐れみの声を出した。 「まぁ……なんだ、あれだな。男だしなぁ。うん」 「いや、本当に……」 「みなまで言うな。男なら1度は通る道だ」  エドワードは、うんうんとしたり顔で頷くが……そりゃあ、興味あったのは事実だけどさ……だけどさ……我慢して読まなかったんだっ! それを読んだと思われるのは(しゃく)なんだけど! 「本当に読んで……」 「ぴー、この事はクラリスには黙っててあげなさい」  ザラは冷たいながらも、同情が混ざった声音でぴーに諭す。  完璧に読んだことになっているよな?  だから、読んでないってば!! 冤罪だぁ! 「ドウシテ?」 「まぁ、男にはいろいろあるのですよ」  まて、まてぇぇ!   弱味を握られた気分になるじゃないかぁ!  そもそも、あの本を選んだのはザラ(おまえ)だろ。  くっそー、こんなことになるんなら……いっその事、読んどきゃ良かった。  エドワードのニヤニヤした顔と無表情ながらもどことなく含みがあるザラの視線にますます顔が火照(ほて)り、いたたまれなくなる。  俺がいくら「読んでません!」と連呼したところで「まぁまぁ……わかってる、わかってる」と物知り顔でまったく相手にされず……2人に「暗い書庫で『子供の作り方』なんて本を読んでたエロ王子」と烙印を押されたと思うと、悔しいやら、恥ずかしいやら……この状況から消えたいという思いに駆られ、額に手を当て、ボソリと小声で呟いた。 「あぁ……もう……穴があったら入りたい……」  ひとり言のつもりだったが、耳ざとく聞いていたザラは珍しくニヤリとする。 「お望みでしたら」  えっ?  ザラが右手の人差し指を軽く振ると、俺の立っていた床に円形の穴が開き、真下に落下する。  本当に穴を出すなぁぁ!!  また、落とし穴に落とされ、俺は再びダンジョンを攻略する事になった……  口は災いの元……である。  
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